ヒラく宇宙ポケット 感想

アルバムについて

KOTOKOがI've専属でなくなった最初のアルバム。
I'veを出たこと、新しい出会いがあったこと。やりたいことだらけだということ。
KOTOKOのこれからがたくさん詰まった感じのアルバムです。あれもこれもやりたくてしょうがない!ってアルバム全体で言ってる気がします。

Track.01 TR∀NSFORM

良く言えば安定のタカーセ。いつもどおりです。新鮮味はないです。あと一曲目に高瀬さんだけど、これは主題曲では無い気がします。
この曲は今より少し前、スタート地点の少し前の場所なんだろうな。詞の内容からいうと、限界打破で打破出来なかったところを打ち破ったんだなと思えます。

Track.02 ☆-未来列車-☆

開曲早々、今までにない感覚。曲はもう聴いて好きになって下さい(投
詞はアルバム全体、今の場所とこれからの場所が対比になっているような気がします。この曲は未来行きの列車が発車してこれから旅が始まるワクワクした気持ち。そこから地球や未知の星を眺めている。サビで星の名前がたくさん出てきますが、本当に星を数えながらキラキラ光っているようです。必聴。

Track.03 メーテルリンク

DECO*27節炸裂。でもKOTOKOのために作っているのがすごくよくわかる。DECO*27さんはニコニコではたくさん有名な曲があってどれもブレス度外視のVOCALOIDのための歌。でもこれは違います。人が歌うための曲。KOTOKOのための曲。
捕まえた幸せの青い鳥。曲の閉塞感、エゴ感。そして最後には青い鳥を籠から放ってそれがお互いの幸せだと謳います。青い鳥とは誰のことで籠とはどこだったのか、なんて。

Track.04 ラブレター

出だしの歌詞「誰がこんなもの欲しがるというのだろう」。これはKOTOKO自身が感じ思っていた心の言葉なんだろうなと思います。重い重いぜ。そして止めたかった時間守りたかった場所とは。
ナカザーの正統派浮遊曲。前アルバム「雨とギター」でもこのタッグだったですが、対比が面白いです。雨〜はフェードイン、ラブレターはフェードアウトな感じ。託した思いはとても似ているけれど向いてる方向が正反対な感じ。あわせて聴きたい:

Track.05 青いジープで

今アルバム最大の空回り曲。ただしいい意味でも。青春ロック、童貞ロック的な曲に、KOTOKOが私たちはこれからなんだから元気もやるきも空回りしていていいじゃない、そのくらいがちょうどいいよ、っていう詞を乗せていて面白いバランスだと思います。
作り手たちは自分たちで作れる楽しさの形を模索して、すごく楽しく作ったんじゃないかな。って書いてる内に好きになってきたよ不思議。実は結構ポテンシャルあるのか?

Track.06 mirror garden

来ました、KOTOKO曲!すぐに世界に取り込まれる。今アルバムのブラックホール担当?。
詞の描く風景はKOTOKOの抱いた破壊願望や被害妄想から来てるのかなと思う。三面鏡で自分の顔を目をじっと見つめながら聴いたらより体感できるかも。自分を縛り付ける自分という場所。

Track.07 Command+S

イントロ展開はおそらく多少I'veを意識してるかな?と思うけど、その上で作曲者の色使いで繊細に飽きない仕上げになってる。この曲が今アルバムの主題曲だと思っています。前トラックで無の空間に達した後このトラックで新しい宇宙がヒラかれる。全ての認識が塗り替えられていくように。Command+SはWindows的にいうとCtrl+S。きっとセーブポイントであり、ここが新たな初心の位置になるのでしょう。
しっかし、初めてRe-sublimityを聴いた時に近い感覚があるなあ。感動。

Track.08 Χ-kai-

Χは、改、壊、図形的な×。ロックだけど某Outerさんとは一線を画すKOTOKOとしてのロック観なのかな。こんなにKOTOKOの直の言葉で攻めてるのは初めて聴いたかも。命令形にこもっている力がすごい。ビクゥッってなる。
なにより怖かったのは「このままじゃ飛べない 泥にまみれた羽なら 覚悟して さぁ 切り離して」という部分。KOTOKOにとって羽って特別なものだよね?……。
最後には自分の手の中ではないもっと大きな流れに溶けて変質していくような様が描かれている。解決ではない何か。

Track.09 サ・ヨ・ナ…ラ

サビはまさにKOTOKOが語るために用意された旋律だね。とにかく魅力的なんだよね、曲が。おそらくアレンジが大きく影響してる。井内さんの曲に対する好き嫌いは結構あったほうだと思う、きっとアレンジのせいだったのかも。女性的な色彩の旋律で、さらに色を引き立てるアレンジ。
季節が関わっている詞です。いままでにあったものが思い出され対比が効いてます。「泣きたかったんだ」でセピア色の二人になれたらと映画を見て泣いていた女の子は、もうすぐ終りを迎えるセピア色の二人になろうとしている。デビューした421でめいいっぱい広がった春。今曲では2番の起点でありながら、どんどん季節が移ろい冬になり、前とは違う春を迎えようとしている。
こういうしなやかで色の綺麗な歌を歌えるなら私も女の人に生まれたかったなあ。

Track.10 beat

尾崎さんとKOTOKOの組み合わせって初めて見た。なんか混ざりきってない感じ。たぶんカッコ書きのところをKOTOKOが書いたんだろうな。「青いジープで」とこれを聴いて尾崎さんはギタリストだなーギタリストのつくる曲だなーと思った。体に刻まれた音符がギター単位になってる感じ。それが良さでもあるから今後どう昇華していくか期待。
KOTOKOは尾崎さんのもってる楽しさを大切に組立ててうまくバランス取ってる。

Track.11 聴こえる

KOTOKOKOTOKOによるKOTOKOのための詞歌。歌と詞が完全にくっついてる。そしてKOTOKOのためなら遺憾なく力を発揮する蜆△。
KOTOKOの中の素直な部分が語りかけてくる内容。その声が聞こえたとき、遠く離れたと思っていた置いてきたと思っていたところからの声が耳に届いた、のかな。大切なものに気づけた奇跡なのだと思います。全てをさらけ出して素直な自分を出した時に流れた涙を形にした一曲。

Track.12 開け!ソラノオト

好きだけどどこを語るのかはよく分からない。ひとことで言うと万能ポップスな曲。音楽番組でもCMでもアニメのOP/EDでもうまくハマると思う。ストリングスは空へと流れだす五線譜の様子かな。

Track.13 地球-TERRA-

今までの総括のような詞。あのとき描いた世界は今どうなっていて、これからどうしていくのか。いままでにヒラいていった世界をこの曲で全線開通させた。
それからKOTOKOが宇宙ポケットをヒラくまでの様々な思い、同じ思いを味わう人がいたらその人への激励でもあるかもしれない。

書き終わりました

ここまで実際にアルバムを聴きながら書いてみました。聴くのはまだ4,5度目くらいだから今後聞いていく内にまた違う気づきがあったりするのかな。久々に詞を噛み砕いてよく味わえるアルバムだと思います。詞に気が向く時は曲もいいのです、私の場合。曲に対して語れる語彙をあまり持っていないのがちょっと悔しいですね。自己評価よりもKOTOKOのこと好きなんだなーと確認しました。いや、前作のイプシロン難破船方舟がね…、新天地とうたいながら羅針盤をなくした漂流日記だったしね、KOTOKOの詞に映る色あいがくすんでるほどだったしね…。いや当時よりは聴くようにはなってるけど。

今作はI'veから距離が離れるKOTOKOに対する不安を一掃するには十分な、素敵なアルバムです。