複製された男

どうだった?→面白かった。
また観たい?→観たい。
ひとに勧められる?→勧めない。これをつまらないと思う人もたくさんいるだろうと思う。

どこがよかった?→漠然と良かったんだけれど、それじゃあ話が広がらないのでゴタクを並べます。まず、描写。専門家じゃないけれども、多分コンテの動きが好みで惹きつけられた。また、話の軸になる部分は王道とも取れるけれども、動かし方としめ方がよかったと思う。メインとなる人物とそれ以外の扱いがキッパリ分かれているのも好印象だった。

描写について→抽象的な表現として所々に蜘蛛が出てくる。それが最後のオチにも深く関わるところなんだけれども、観ている間はちゃんとは解っていなかった。帰り道に、これは間違いなく重要だ、と思って調べた。蜘蛛が何を象徴するものなのか、検索すると「縛りつける母性、束縛する女性」といった言葉があった。なるほど、と。映画のシーンを巻き戻して全ての蜘蛛が指していたものがこの1つのことに集約している。舌を巻いた(使い方合ってる?)。

話の筋→シナリオはドッペルゲンガーものといったところ。瓜二つの男が2人。どちらも安定した生活と閉塞感を裏表に抱えている。些細なきっかけで存在に気づき互いの生活に干渉していく。
男は地味な大学講師、またはギラギラした三文俳優。それぞれパートナーとなる女性がいて、その場限りのようないつ終わってもおかしくない関係の女性と、結婚・妊娠している女性。
対比がうまくとられていて、共通する部分と対照的な部分とが、韻を踏むようにあらゆるところに存在する。
それらがぶつかったり交ざったりして展開していく。最後まで目が離せないというやつ。

人物の扱い→シャフトのアニメなどによくある、モブキャラを背景扱いというかメインキャストではないと明示しているような形。初っ端のきっかけを作った主人公の同僚、そこから繋がる作中映画の中身など、割り切った登場になっている。理由付けには労力を割かずに、物語を進めたり暗喩を込めたりと肉付けに特化して使われているようだ。