祖母の弟が危篤だった

昼下がり、夕飯の準備が始まるかどうかという頃に、電話がなった。

病院からだ。大叔父の敏行が植物状態だ、と。
疑問は次から次へ湧いてきたが、大半の答えを病院サイドは持っていた。
 
・敏行は交際中の女性の家で木を剪定している最中に脚立ごと倒れたこと
・救急搬送されたが回復の見込みがないこと
・もっとも近くに住んでいる兄弟には対応を拒否されたこと
・そして故郷からやや遠い街に住んでいる長女=私の祖母のところまでたらい回しになったこと
 
突然のことであり、仕方なく母と祖母は病院に出向き、大まかに以上の説明を受けた。
病院は延命のための身元引き受け人になってくれるかどうかを聞いた。それが主題である。
 
もし、いわゆる普通の家族なら、引き取り人がおり、延命するか、弔うか決めねばならないのだろう。私の家は違った。長年積もった様々なしがらみ・トラブル・私怨が、そうはさせなかった。
家人は病院へこの家族の状態を説明した。この植物状態の敏行を引き取る人間も弔う人間もいないことを、現実として理解してもらうしかなかった。
いずれ自治体の所定の方法で火葬されるだろう。生きているうちに道を違えた親族は死してなお全く別の道へ進むことになった。
これより先は知らないし知る術も権利もない。
これで敏行おじさんとは今生の別れとなった。